今年に入って引っ越しを3回。
広い家で広げた生活は、安い狭い家に越す時に大量のゴミが出る。
ゴミとの格闘。
ゴミと呼んでいいのだろうか。まずはマンションに設置したオーダーメイドの外国製システム家具。部屋の寸法ぴったりに作っているので、部屋はとてもスッキリと格好いい。とても高価な家具。それが、退去時に一番の問題ゴミになった。
正規業者で費用を払って解体するか、不動産屋さんに説明して置いて行くか、一部撤去かとか。
「ノコギリで自分で切り刻め!」とか弟は言う。それも考えたが、あれだけの量のパネル。丈夫で頑丈でデカい。女一人で切り刻めるものか。それだけの労力を考えたら、正規業者で解体し、リサイクルパネルとして使ってもらうしかないと、最終的に考えた。
労力vs費用。
もちろん、不動産屋にも説明し、写真を送り、実際に見てもらい、一部「あった方がお洒落」な部分は残してもらえるようにした。それでもかなりの費用削減になる。
オーダーメイドの素敵な暮らしが、ゴミになる。撤去費用も業者に頑張ってもらい、最低限で済ませた。撤去の様子を見ていたら、とうてい「自分でノコギリ」は無理だと分かった。
収納がたくさんあったから、大量にあったモノたち。
売れるものはオークションに出した。
適当に撮影して出すと、テキメンに値段に反映したので、ちゃんと撮影し、それなりの労力を使い、なんとか売り切った。
次に引っ越した先はマンションではないので、粗大ゴミ置き場がなかったし、大家さんも粗大ゴミを出したことがなく、「すみません、すみません」と謝って、大家さんの敷地内に置かせてもらった。
粗大ゴミにしたのは、ダイニングの椅子4脚のみ。猫がバリバリにしてボロボロなので、これだけは「ゴミ」と私も認識し、そうした。
他のものは一切「ゴミ」にしなかった。
「良いもの」「まだ使える」「ブランド物」…。これらはリサイクルにあたってほとんど何の意味も持たない。
「年式が新しい」「流行っているブランド物」。これしか売れないし、引き取ってももらえない。
「タダでいいので引き取ってください。これだってリサイクルショップで売れるでしょう?」とリサイクル屋さんを呼んで聞いても、「今はどこも厳しいんです。利益になるものしか引き取れないんですよ」とのこと。
3件くらいリサイクルショップを呼んだ。フォルミオのベッドは高値で売れた。
もちろん同時にオークションもやっていた。
ダイニングテーブル。真っ白で傷もなく、シンプルで機能的な品。
これはオークション1円で、喜んで取りに来てくれる人に譲った。引き取り手があって良かった。ただそれだけが嬉しい。
引き取りに来る人というのは、他にも物色するもので、同時にオーダー家具の残骸でもあった電話代ももらってくれた。
h.Pデコのベンチソファーを取りに来た人は、同時にガーデニングのアールデコ調の鉢受けをもらっていった。
ウェディングドレスは、新進気鋭のデザイナーのもの。どこへ持ちかけても「誰だか分からない」「意味が分からない服だ」とのことで引き取ってもらえず、そういったブランドも扱っている銀座のリサイクルショップでようやく値段が付いた。
「素敵な品ですね。これ、本当に高いものですね。モデルさん以外、誰も着られないような服ですし(笑)。でも、この人のデザインでも、ウチではこれしか出せません。デザイナーに申し訳ないですが…」。
それでも、価値を分かって買い取ってくれたのが嬉しかった。(あと電話で分かってくれたのは「コメ兵」だった)
そうそう、自転車。チネリのロードバイク。これも、一体何件の自転車ショップに電話しただろう。その中で一番高値を付けた店に売ってきた。「手放したらコレ、もう手に入りませんよ」とのこと。いいよもう。
それでもまだ売れ残り、引き取り手のない物は残る。ワイヤーラックや棚やら陶器の置き物や物干竿やら自転車用品やらなんやらかんやら。
大家さんにこれ以上粗大ゴミの話しをもちかけるのも忍びないので、最終的にゴミ回収業者を呼んだ。よくチラシが入ってくるアレだ。
若い男の子が来た。
いろいろ物色して、結局「何も持って帰れない」と言う。
「え、回収業者さんでしょ。回収するだけはできるのでは?」と聞くと
「回収費用を考えると、粗大ゴミで出した方がずっと割安です」とのこと。
私は「そうなんだ…。回収屋さんも持っていってくれないんだ。みんな、まだ使えるしゴミじゃないのに…。私は、お金にしたいんじゃなくて、もったいないからリサイクルしてもらいたいと思って呼んでいるのに…」
すると男の子は
「ゴミってそうなんですよ」と、ポツリ。
「ゴミって、ほとんどがゴミじゃないんです。全部使えるものだし、欲しい人はどこかにいます。ただ、それを探すのは難しいし、今はIKEAやニトリとかで同じような物が二束三文の値段で新品が買えます。そういう世の中だから、ゴミじゃないものもゴミになっちゃうんです。リサイクルショップで数百円の中古の棚と、1000円くらいのIKEAの新品なら、どちらを買いますか?」。
「じゃぁ、回収業者さんはどういう人が利用するの? 粗大ゴミが一番じゃない?」と聞くと
「面倒くさいから一気に捨てて、とか、持ち主がいなくなったからとか、だいたい「面倒だ」というのが理由です。処分費はあまり関係ありません」とのこと。
男の子は室内を見ながら悲しそうな顔をした。そしてまた「ゴミって、そういうものなんです」。
最後に、彼は帰る時に「これ、可愛いですね」と、スワロフスキーの小さな置物を「僕がもらいます」と言って持っていった。オークションで値が付かなかった壊れ物だった。
最後に室内を不動産屋さんと内見する日の午前、母と掃除をしていて、まだゴミが出て来た。最終的に「もう!ご免だ!面倒くさい!」と、私はまた別の回収業者を呼んだ。
次に来たのは、ゴミに感傷的になる男の子ではなく、サバサバしたオッサンで、「こんな程度でも高くついちゃいますよー」とのこと。
さすがに見積もり値段を聞いてやっぱりやめた。お金がないから引っ越すというのに!
オッサンも「せっかく来たから」と、電気スタンドをもらっていった。
こうして、部屋はからっぽになった。
そして、次の引っ越し先に行く前に引っ越し屋さんに聞いておいた。「一人暮らしのワンルームで持って行くのに、丁度良い段ボール箱の量っていくつぐらいですか?」
10〜13個程度だと言うので、キッチリその範囲内におさめた。
何もかも捨てた。売った。持って行った。頑張った。
そうして、今のコンパクトな暮らしがある。
何なんだろう?
写真も、思い出も、卒業証書も、画集も、家族の形見も。捨てた。
じゃあ使うものだけが必要なのか、何だか分からなくなってきた。被災地の光景も想った。荒れ地から、思い出を少しでも拾おうとしている人たち…。
私はこの半年、不要品を細かくちぎり、ゴミ捨て場との往復の日々。一生懸命オークションで売りさばく日々。送料計算や梱包・発送に追われたり。リサイクル、回収業者に電話しまくる日々。大量の洋服をグラムで買い取る洋服のリサイクルショップも。
「ゴミってそうなんです」
回収業者の男の子の発したその言葉だけが、今も耳に残っている。
「もったいない〜MOTTAINAI」が美しい日本語だなんて、誰が今の日本で言えるのか。
離婚は、これだけのゴミを出す。
離婚なんかより、とても悲しい引っ越しのそんな日々でした。
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